
― ICHIMAN Cross-Talk 街の個性を守り育てるために。オーナー兼商店街理事長と考える、不動産と地域の共生のカタチ
地域の発展に寄与する不動産オーナー・田中様が、商店街の理事長としての視点と、市萬と実現した取り組みについて語ります。田中様が抱える地域の課題や不動産業界への期待、そして市萬との関係を通じて見える未来のビジョンが明らかに。商店街の賑わいと地域の魅力を高めるために必要な施策や視点を、西島と共に掘り下げていきます。

祖師谷昇進会商店街振興組合 理事長 田中彰


株式会社市萬 代表取締役 西島 昭
取材ライター:平床麻子
世田谷区用賀在住。4児の母。ライター、モデルの傍ら、NPO法人neomuraの理事として地域活性に携わる中で市萬と出逢う。現在は広報やライティングを軸に業務をサポートしている。
―― 田中様は、いくつもの不動産を所有する不動産オーナーであり、商店街の理事長も務めていると伺いました。簡単に自己紹介をお願いできますか?
田中さま
もともと父は祖師谷で農家をしていました。それが、昭和30年頃に東洋一と言われる規模の団地ができて、商売をやってみようと酒屋を始めたんです。当時は私も学業の傍らお手伝いをして、そのまま家業を継ぐことにしました。
その頃はどんな業界もすごく繁盛した時代で、うちも最初は順調だったのですが、自分が50代半ばを迎えたタイミングで、建物の老朽化で建て替えを余儀なくされまして。建て替えた後も酒屋を続けるのはなかなか大変だと思い、新たにコンビニを始めました。それから10年間経営をして、ちょうど手を引く頃に商店街の理事長をお引き受けして、今年で10年以上になります。並行して、今も父の畑で農業もしております。
市萬との出会いがもたらした新たな挑戦
―― 田中様と市萬は、どういう経緯で知り合ったのでしょうか?
西島
きっかけは金融機関からの紹介でした。事業用テナントの募集に苦戦しているということで2011年にご相談いただき、田中様からは「地域の発展のために、商店街には無い業種を誘致したい」というご要望もあってなかなか大変でしたが、最終的にはよい事業者さんに入居していただけました。
田中さま
そうでしたね。
西島
その後は、築古アパートの建て替えや有効活用の相談もいただきました。当時は、行政が保育園の誘致を積極的に行っていて、保育園は地域貢献にもつながるということで田中様にも賛同いただき、誘致に乗り出しました。
田中さま
最終的には近隣の方から音の問題を指摘されて、実現はしませんでしたね。
西島
それで再度計画を練り直して、「地域に若い方を呼び込もう」と新たに新婚さん向けの共同住宅を企画しました。木の温もりが感じられるお家にしたかったので、鉄筋コンクリート造のマンションではなく敢えて木造を選んで、物件には「木と暮らす」を語源に「キクラス」と名付けました。あとは、木造のデメリットである上下階の音をどう解決するかでした。
田中さま
そうなんです…。木造アパートはどうしても上下のトラブルが絶えなくて、悩みの種でした。
西島
それで田中様と話し合って、上下階を同じ人に貸せば音のトラブルも解消されるのでは、とメゾネット(長屋式)の建物を企画しました。

―― ナイスアイディアですね! 田中様は今もなお市萬と取引をされていますが、どんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
田中さま
不動産以外の相談にも丁寧に対応してくれるんです。それから社員さんが本当にみんな感じが良くって。西島さんの教育がいいんだろうね!
西島
田中さまは知識も豊富でいらっしゃいますが、ご自身の資産のことをトータルで相談できる人がいないというお悩みをお持ちでした。現在はその部分を当社が全面的にサポートさせて頂いております。
チェーン店を乱立させるのではなく、街の個性を育みたい
―― ちなみに、不動産の活用の仕方が地域の皆さんの暮らしや街の活性化などに直結してくると思いますが、田中様は商店街理事長、不動産オーナーとして「不動産×地域」という点で日頃課題に感じていることはありますか?
田中さま
地域に後継者がいないことですね。だから、街にチェーン店が溢れてしまうんです。
西島
そうですね。田中様はいつも「このままだと、祖師谷もありふれた街になってしまう」と懸念されています。
その想いに私たちも共感しまして、その後田中様と一緒に大手チェーンではなく、商店街にないお店を時間を掛けてじっくり探すことを試みました。結果的には、三軒茶屋の有名なお店から独立されたオリジナリティ溢れるパン屋さんが来てくれました。パン屋さんのオーナーは地域とのつながりも大切にしてくださる方で本当にステキなご縁でした。
田中さま
イートインもあって、おかげで街が明るくなりましたね。
西島
そこに何を誘致するかによって、街の賑わいは大きく変わるんですよね。田中様は商店街の理事長さんという立場を超えて、この街を良くすることを真剣に考えていらっしゃるので、常に自分の利益だけではないという発想をお持ちで。その意識の高さには毎度頭が下がります。

地域活性化のために、これからの不動産業界に期待すること
―― 市萬もお客様本位を掲げて丁寧にお仕事をされていて、田中様は街のことを一番に考えて街作りをされていて、いい循環が生まれているなぁと感じました。田中様は、これからの不動産業界にどんなことを期待しますか?
田中さま
この辺はまだ生産緑地も結構あって広い土地が残っているんですけど、ほとんどが建売になってしまうんです。もっと街全体のことを考えたご提案をして頂きたいと思いますね。
西島
大手の不動産会社は短期的な部分でのニーズに応える力はあるのですが、地域のことをよく知っているわけではないので、街のための提案には限界があると思います。
―― 不動産業界ももっと地域に溶け込んで、街そのものを理解することが大事になってきますね。
西島
はい、大事だと思います。それから、会社によって得意分野が違うので、お客様が案件によって不動産会社を使い分けられるようになるといいですよね。
―― なるほど。しかし、自分に合った会社を探すのも難しそうなので、そのマッチングがうまくできるといいですね!
西島
そこは今後の課題かもしれないです。

―― では最後に、田中様にお聞きします。今後の市萬に期待することはなんでしょうか?
田中さま
以前から取り組まれている建物の長期活用がすばらしいと思っています。今は木造でも耐震性能がしっかりしていますので、どんどん推進して頂きたいです。私たちはリノベーションのやり方や、費用面でも分からないことが多いので、今後も市萬さんに伴走していただけたらありがたいと思っています。
西島
不動産賃貸業はとにかくスパンが長い事業で、田中様もこの街の20年、30年を見据えていらっしゃいます。これからは古い建物も益々増えていきますが、単純に建替えだけでは環境にも多くの負荷がかかりますので、今後も勢力的に建物の長期活用に取り組んでいきたいと思います。
インタビューを終えて
何気なく映る街の風景にも、様々な人の想いが込められている。お二人のインタビューを終えて、こんなにも熱意を持って街を作られている方々がいるということに感銘を受けました。取材の前に、パン屋さんの裏手にある3棟の賃貸用戸建ても拝見したのですが、敢えて建物前の歩道幅を広めに確保し、街並みとしてゆとりのある空間を演出したと伺い、これまた目から鱗。普通なら土地めいっぱいに建物を建ててしまいそうなものですが、景観を最優先されたという事に感動しました。世の中に市萬のような不動産会社と田中様のような不動産オーナー様が増えれば、確実により良い社会が築けるはず!